セラ改造指南道場 5章 駆動系ノススメ
次に、セラをチューン(または維持)していく上で、走れば必ず負荷のかかる駆動系はどう強化(または補修)すればよいか。
1.フライホイール(MT車)
いきなり深い話ですが、エンジン全体のレスポンスアップのためには、クロモリ(クロームモリブデン)製などの軽量フライホイールがオススメ。重たいフライホイールの慣性力が低下するので、エンストしやすくなったり、アイドル回転が安定せず数百回転あがったり戻ったりを繰り返したりしますが、吹け上がりがたいへん良好になります。クラッチキットを発売しているメーカー・ショップは、だいたいフライホイールも持っているでしょう。ただしこれは4Eの話。
5Eに社外品はありません。両者の違いは、わかりやすいようにホイールの例で言うと、たとえば4穴PCD100、これが4E5Eともフライホイールは6穴で共通なのですが、PCDが一致せず、互換性がないのです。サイズや規格は同じみたいです。(重さ不明)なじみのショップ等にツテがあれば、純正ノーマルの新品を取って持ち込み、加工してもらうとよいでしょう。その場合でもクロモリ製ほどには軽くできません。また、4E用のフライホイールを5Eに組めるよう加工してもらうのも、切削技術としてハイレベルですが、興味深いところです。軽量フライホイールにすると、エンジンかける時のセルモーターの音が変わります。フライホイールが回されているからです。
NAではわざわざ交換する必要性はありませんが、最初に述べた軽量化によるメリットが高回転域で効いてきます。クラッチ交換の際にでも、リフレッシュの意味で一度ノーマル新品に交換してみることをオススメします。いちおう、エンジンが回っている間中ずっと一緒に回っている部品です。劣化しないはずがありません。
2.クラッチ(MT車)
5EのNAなら純正クラッチでもほとんど問題はないでしょう。あらゆる手を尽くして150馬力とか出ちゃったら考えましょう。4Eのターボでも、ノーマルかそれに近い馬力なら純正でも大丈夫(5E−FHEよりひと回り荷重圧が大きい)、というのも大馬力車とは違って伝達トルク自体は小さくて済むからです。駆動系に大掛かりなものは必要ないのがコンパクトスポーツのいいところ。なので、チューニングして200ps近くになってくるようなら、そこで強化品やツインプレートを考えましょう。重いクラッチって、2時間も乗っているとつらくなってきますよ。
3.ミッション
マニュアルトランスミッションのお話です。ターボにしても純正ミッションは耐久性に問題ありません。といっても、300ps近くをマークするようなエンジンでは数回全開走行すればもう壊れてしまうといわれています。いわゆる強化品も出ていないので、結局そのまましかないわけです。(究極的には4A−G用やそれ以上のクラスのミッションを持ってくる方法もありますが…)
また、セラとEP82とEP91では、ミッション型式が違って、ギア比が異なります。EP91のほうが3〜4速で若干接近しており、タービンの味付けに沿うものとなっています。しかしここは複数の選択肢から選べるものでもないので、エンジンとセットで購入したならセットで。エンジンだけ買ったならミッションは現状のままでいくのがよいでしょう。
クイックシフトはセラもEPも共通なので、EP用を取付可能。まだTRDから発売中。C’sのショートストロークシフトはもう中古を探すしかない。C’sはシフトレバーのみの交換となり、台座はノーマルをそのまま使うので、取り付けによる個体差が大きい。1速、2速が入りにくいという話もあります。対してTRDは台座とレバーが最初から組んであります。現実的にはTRDしかないということですね。
珍しくなくなってきた感のある、AE111用6速マニュアルへの交換ですが、中古の出物もほとんど無く、今となっては新品も供給されるかどうか不明。フロントが重くなるし、現在の5速によっぽどのトラブルがない限り、検討すべきではありません。5EのNAではローギア化、クロス化で気持ちいい吹け上がりとシフト操作を存分に堪能できますが、ターボと6速を組み合わせると、すぐに吹けきってしまい、シフトアップしてもまたブーストがかかるまでのタイムラグに喘ぐ、ということになり、一概においしいとは言えないようです。この6速は強度がないというウワサで、200馬力程度、つまり4A−Gが現実的に出せるパワーまでにしておいた方がよさそうです。
オートマチックトランスミッションですが、セラのころは機械式(油圧制御)であり、21世紀の現在、電子制御や無段変速すら当たり前となった今、セラのATはどうしても見劣りします。管理人の愛車は全てMTなのでATは詳しくありませんが、EP82ターボ中期以降では電子制御化されているので、ターボ化と同時に電子制御AT化で世代を上げるのもよいでしょう。5EでもEL5系ターセルコルサカローラ2、ラウムなどから持ってくることができるとすれば(ちゃんと走るなら)、長く乗るという点でも望ましいのではないでしょうか。
参考までに…
セラMT セラAT EP82 EP91
1速 3.166 3.643 3.166 3.166
2速 1.904 2.008 1.904 1.904
3速 1.310 1.296 1.310 1.392
4速 0.969 0.892 0.969 1.031
5速 0.725 ――― 0.815 0.815
R 3.250 2.977 3.250 3.250
F 4.312 2.962 3.722 3.722
(Fは最終減速比=ファイナル)
4.LSD(デフ)
これはサーキットで遊ぶような人だけ、ということになります。セラにしろスターレットにしろ、ノーマルではデフ付きはなく(ビスカスLSDはデフとは言わないそうな)社外品をあとから組み込むことになります。その仕組み上、エンジンからミッション、ドライブシャフトにまで負担増は及びます。一念発起して組もうと決めたら、ショップ等に相談して用途にあったもの、タイプ、強さを選ぶこと。また、ミッションを分解して組み込むので、ついでにクラッチ交換などをすると必然的に工賃が安く上がるので、覚えておきましょう。
5.ドライブシャフト
セラとEP82ターボで共通なので、エンジンにくっついてくる部品だろうから問題なくそのままいけると思われます。EP91はちょっと分かりません。ドラッグ・ゼロヨン用として強化品が出ているが、そのような尋常でない負荷がかかる使い方をしない限り、ノーマルで充分でしょう。値段も尋常でないし。ターボでサーキットを攻める、または街乗りでもアツい走りを繰り返すようなら、予備を持っておくと心理的にラクですね。
また、ドライブシャフトブーツという、ホイール取付面(ハブ)の後ろ側と、ミッションからシャフトが出ている部分にあるゴム製の蛇腹上の筒がありまして、セラくらい古いクルマになると破れていない(交換したことない)というのはあり得ないと思います。FF車は前輪ばかり酷使しますので、ことあるごとに覗き込んで、グリスまみれになっていないか確認して下さい。もしベタついたグリスが飛び出していたら即交換です。交換時にドライブシャフトの取り外しをしなくてもよい、分割式(スピージー)が主流となっていますが、サーキット派の人など、アツい走りをするのなら、分割式は避けるべきです。
2006.6.4